当社の業績は2023年度以降、バス需要の回復を受けて売上台数が伸びたことで増収増益を継続しており、2025年度も好調な生産が続きました。しかし、バス事業者様の人手不足やバス利用者の減少、物価高や資材の高騰、中東情勢の影響により塗装用のシンナーが一時的に入手しづらくなるなど、事業を取り巻く環境は必ずしも楽観できるものではありません。近年は「不確実性の時代」と言われ、地政学リスクやサプライチェーン上の不安定要因が常態化しています。このため社会の変化を待つだけではなく、私たち自身が変化しなければ成長は望めないと感じています。ものづくりの現場から間接業務、固定費に至るまで、従来のやり方に固執せず、より良い方法へとシフトする必要があります。
私は長年にわたり、ものづくりの現場で仕事をしてきました。ジェイ・バスの経営に携わるようになってからも、まず現場を見てリーダーと会話し、経営と現場にあるギャップを探ることを意識的に行ってきました。また、現場でチームや仲間の大切さも実感してきました。一人では解決が難しい課題も、多様な人財が集うチームで知恵を出し合い、それを実行に移せば、より大きな成果や達成感につながります。商品開発においても、企画のメンバーだけでなく生産部門のアイデアが加わることで、新たな視点やさらなる効率化につながり、ものづくりが進化するはずです。株主である日野自動車株式会社、いすゞ自動車株式会社やサプライヤーも含め、社内外の連携を深めながら、新たな価値創造を実現していきたいと考えています。
コロナ禍の間に、ジェイ・バスの事業は守りに徹さざるを得ない状況が続きました。現在は回復傾向にあるものの、機会を失った時間の影響は大きく、それが従業員の働きがいにも影響を与えている可能性があると認識しています。当社の従業員は、一人ひとりが真摯に仕事に取り組む姿勢や、過去から継承してきた巧みな技能や専門技術といった強みを持っています。しかし今後の成長のためには、挑戦し創造する人財を育んでいくことが急務です。
労働力が不足する中で生産性を上げるためには、社内でDXやAI活用も拡大しなければなりません。ただしAIに依存しすぎると思考停止につながる可能性もあるため、使われるのではなく使いこなす思考を持った人財を育てていく必要があります。また、人事評価制度の見直しや、定期採用・中途採用にこだわらない採用、勤務形態の導入、職場環境の整備など、多面的に施策を検討していきます。こうした取り組みが、「ジェイ・バスで働いてよかった」と誇れるような、働きがいと魅力を感じられる会社として、エンゲージメントの向上につながると考えています。
6つのCSR重点領域については、粘り強く継続してきたことで、一人ひとりが自分の業務と関連付け、社会課題への感度を高めながら取り組めるようになっていると感じます。
ジェイ・バスにとって何より大切なのは、安全に関する取り組みです。重大災害を起こせば人命に影響が及ぶだけでなく、会社としても信頼を失うことになります。2025年度は軽微な災害が増加したため、外部の安全診断を受けることにしました。これにより現場の意識を向上させるとともに、ヒヤリハットなどの提案を上司が受け止め是正につなげる、組織的な改善も目指していきます。また環境負荷削減においては、素材や塗装方法を変更したり、溶接を用いない工法の検討などが進んでいます。生産工程をすぐに変えることは難しいため、長期的なビジョンを持ち、できることから着手することが大切だと考えています。
私は「安全と変革はつながっている」と考えています。人びとの移動を支える社会インフラ企業として、「安全」が保たれ従業員が安心して働く環境を整え、「挑戦」できる企業風土を育む。その環境の中で「魅力ある雇用」を実現することが、事業を通じた「社会貢献」につながっていきます。その循環を未来へつなぎ、持続的な事業価値向上を実現し、ステークホルダーの皆様から信頼され続ける企業となることを目指して、これからも変革の歩みを続けていきます。