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変化する経営環境の中で変えるべきものと守るべきものを見極め、前進し続けます 代表取締役社長 石川 哲朗

回復基調にある経営環境を的確に捉え、改めて動き出す

2020年初頭に新型コロナウイルス感染症が拡大し始めて以降、ジェイ・バスを取り巻く事業環境は厳しい状況が続いてきました。市場の冷え込みを受けて2021年度にはバス需要はここ数十年間で最も低い水準にとどまりました。2022年度は需要が反転してきたという実感はあるものの、コロナ禍以前の最盛期に比べれば生産台数は半分程度にとどまっている状態です。
また、回復のスピードが路線バスと観光バスで異なっていることも、当社にインパクトを与えています。コロナ禍以降、路線バスについては減便したものの動きが止まることはなく、新車への代替え需要も継続しています。一方観光バスについては、観光業の鈍化の影響を受けて車庫で休眠していたバスも多く、需要の落ち込みはこの先も続くものと見込んでいます。ようやくインバウンドが復活し始め、クルーズ船の運行なども元通りになりつつあることから、観光バスの出番も回復していくと考えられますが、一方で観光業の人手不足の問題や団体旅行の減少といった要因が今後どの程度の影響を及ぼすか、注視していく必要があります。
このような状況下で、当社は生き残りをかけて構造改革に取り組み、株主とも連携をとりながら事業活動を進めてきました。現在も小松工場の一部の社員が地域の企業等に出向しているなど、完全な回復まではまだ時間がかかる見込みですが、縮こまって耐える時期は過ぎたと捉えています。2023年度は「変えるべきところは変え、変えずに守るべきものは守る」という姿勢を全社に浸透させ、未来を見据えて動き出す一年を目指します。

CSR活動を積み重ね、着実な成果へとつなげる

厳しい環境に置かれた2022年度でしたが、CSRの推進は着実な成果を上げているという手応えがありました。
6つの重点領域については、2025年および2028年を目標年とするありたい姿を策定しました。また、推進体制を見直し、部長クラスの分科会活動を充実させ、その結果をCSR委員会に上程するという形に改めて整理しました。これにより、体制の形骸化を防ぎ、より実態に即した活動ができればと期待しています。
2021年度から動き始めた電気自動車(EV)路線バスのプロジェクトが進行しています。従来のバス製造とは工程や設備を変更しなければならない部分などもあり、現場でもさまざまな工夫が求められる難度の高いプロジェクトですが、国産EVバスは各方面から大きな期待を集めていることもあり、2024年の生産開始という目標に向けて今後も邁進していく考えです。
また、カーボンニュートラルに向けた取り組みも社内で着実にステップアップしました。製造工程におけるCO2排出削減に積極的に取り組んできたことで、省エネルギーなどの意識が社内に浸透したという実感を持っています。日本自動車工業会や日本自動車車体工業会の定める目標や業界の動向を都度捉えながら、当社としてどのようなデータを把握し、どの水準で目標を立てるか、これからも議論を続けていきます。

一人ひとりの社員がイキイキと活躍できる職場を目指して

厳しい経営環境下では、社員がモチベーションを維持・向上させることが難しくなります。なるべく不安要素を取り除き、安心して業務に当たれるよう、丁寧なコミュニケーションが重要だと感じています。期初の方針説明などを集合形式で開催できるようになったため直接語ることはもちろん、私から社員へのレター発信なども通じて、情報や会社の方向性をこまめに伝えるよう心がけています。また、社外に出向している社員に対しては、組合とも連携をとりながらフォローアップを行っています。
2023年度の採用は障がい者雇用の2名のみにとどまっていましたが、2024年度入社より新卒採用を再開します。若者の就業意識が変わる中、働きたいと思っていただけるような魅力的な職場を実現しなくてはと思いを新たにしています。
加えて、社内におけるコンプライアンスの徹底も着実に進展しています。社内通報制度を通じて情報が入ってきたとき、従来は解決までに時間を要することが多く、会社がどのように対応しているのか通報者に見えづらいという課題がありました。この数年で対応の見直しを行うとともに、通報者とのエンゲージメントもよりいっそう強化し、解決までのスピードアップを図ってきました。こうした取り組みも、社員が安全・安心して働くために欠かせないものであると考えています。
当社は2024年10月に創立20周年の節目を迎えます。「人びとの移動を支える」ことに誇りを持ち、これまでに培ってきた思いや行動を大切にしながら、未来へ向けて前進し続けていければと考えておりますので、今後ともご期待いただければと思います。